コンビニはむずかしい

コンビニでものを売るということ

コンビニの商品は安くない.価格の面で考えるならば,大量仕入れを行っている大規模な小売店に勝つことは難しい.それでも多くのコンビニは一定の客数を維持し,利益を上げている.それは,消費者にとって,大規模な小売店ではできない利点がコンビニには存在しているということである.では,コンビニにはどのような利点があるだろうか.

  1. 24時間営業
  2. 店舗への移動の容易さ
  3. 商品の入れ替えの速さ
  4. 短時間で買い物を終了できる店舗面積の狭さ

ざっと次の四点が上げられる.1,3,4については本来大規模な小売店と比較すると本来デメリットとなる点をうまく活用した例であるように思う.1)少ない人件費で維持できる店舗面積により,店舗設備の維持費が無駄になる深夜帯の営業が可能になる 3)少量仕入れ,売り切りの納品スタイルによって,大量仕入れに比べて仕入れ値は上がるが,新商品の回転速度が高い 4)最低限多くの人が必要とするものを取り揃えることで,品揃えできるアイテムの限界を逆に手軽さとしている.

つまり,コンビニは商品ではなくサービスを売っている.もちろん商品も売っているが,コンビニという形態が成り立たせる本質は商品を仕入れ値より高く売ることではなく,商品にサービスという付加価値をつけて売ることである.それは家から徒歩で簡単にける距離に店舗があることだったり,新商品がすぐに売られることだったり,真夜中でもタバコとビールが手に入ることだったりするわけだ.

コンビニの売上を成長させるには

前項で述べた2については客にとってはメリットであるが,各店舗にとっては成長を阻害する厄介な点であるように思う.例えば,自分の家の近くにコンビニが2軒あり,片方が100mもう片方が500mの距離にあるとしよう.この時あなたはちょっとお昼ごはんをコンビニで済ませようと思った時どちらの店舗に行くだろうか.遠いほうが自分の好きなチェーンだったり,近いほうに自分が嫌いな店員がいたとしても,特別遠いほうでしか買えないものでもない限り,近くの店舗に買い物に行くのではないかと思う.少なくとも私はそうだ.もちろんそうでない人もいるだろうが,長期的に見るならば,どちらの店舗に行くのか偏りがあるだろう.(私は家から同じくらいの距離にミニストップセブン-イレブンがあるが,ほぼ100%セブン-イレブンに行く.セブン-イレブンのほうがどちらかというと近いからね.)各店舗にとって厄介なのはこの点である.立地,つまりどこに店を出すかによってその店舗にやってくる客数というのは,外部のイベント(近場の工事や祭り事など)を除外して考えるなら正規分布的になると予想できる.コンビニの売上は簡単に次のように計算できる.


売上=客単価 \times 客数

この式において客数は基本的に立地によってある程度固定されるから,店舗の売上を成長させるには客単価を伸ばす必要がある.客が買うつもりのなかったものを買う気にさせるテクニックは様々ある.基本的なものは特別意識しなくてもコンビニという形態をとってる時点で必然的に行われている.例えば,多くの客が目的買いの対象としている商品を店舗の外周に配置することで店舗全体を歩かせ,動線に衝動買いが期待できる商品を配置することで追加の購入を誘うテクニックはどのチェーンでも店舗の構造的に自動的に行われていることだろう.こういったものも,客が何をコンビニに求めているかを予想することでより効果的に活用できるのではないか.例えば,ほかよりも早く売り場に出される新商品は衝動買いの対象になる.狭い店舗面積では日用品の買い忘れに気付くのは容易だろう.そのチェーンでしか売っていない価値の高い商品は衝動買いだけでなく目的買いもされるだろうし,近隣の競合他店から一時的に客を掠めとるのに有効である.コンビニの本質が商品でなくサービスを売ることだと認識すれば各店舗独自の戦略を編み出すのに役に立つ.

コンビニのこれから

元締めのフランチャイザーが利益を伸ばすのは簡単なことだ.他チェーンの店舗の近くに自分のチェーンの店舗を出店させて少しでも他チェーンの店舗の売上をかすめ取れれば,あるいは競合が少ない地域を独占できればロイヤリティによる収入は増えるのだから,躍起になって店舗数を増やそうとする.

首都圏のコンビニは飽和していると見てもいいだろう.五分も歩けば何かしらのコンビニを発見できるのだから,これ以上新店を隙間に出し続けていてもフランチャイジーオーナー同士の潰し合いにしかならないのではないかと思う.過度なドミナント戦略フランチャイジーの不信感を高めるのではないか.私の知っている例だと地域に根強い人気がある某チェーンの店舗の近くに別のチェーンが連続で出店したことがあった.その件で特をしたのは出店したほうのフランチャイザーと,もしも店が立ちゆくだけの利益が得られているのであれば新店のオーナーくらいだろう.立地によって客数の上限はある程度決定されるのだから,もしもあなたがフランチャイジーとして新たにコンビニ経営を始めようと考えているのであれば,すでに近場に店舗が存在する立地は最大の客数を活用することはできず,それだけでリスクと判断するに十分であることは頭の隅においておくべきである.

このことは各フランチャイザーも考慮しているようで,最近は地方出店にかなり力を入れているようだ.日本地図,あるいは世界地図を300m間隔でコンビニがうめつくすまではコンビニフランチャイザーの成長は続くだろう.それからはお互いに潰し合うしかない.不幸なフランチャイジーは元締めの代わりに負債を背負うことになる.